J19-Q6B

審議録


対象者:木村 大樹(43歳・東京都練馬区在住)


担当者A:このたびは、弊社主催のクルーズ旅行にご当選されました。まずはおめでとうございます。

木村:(腕を組んでやや反射的に)……はあ。なんで俺なんですかね? なんかの間違いじゃないですか。

担当者B:いえ、抽選の結果ですので、確かに木村様が当選されています。今回はそのご参加にあたって、事前にいくつかお話を伺っております。

木村:まあ……タダで旅行なんて久しぶりなんで。けど正直、こういうのって“裏”あるでしょ? なんか条件とか契約とか。

担当者A:ご不安なお気持ちは理解しますが、追加料金などはございません。あくまで当選者向けのご優待旅行です。

木村:(鼻で笑いながら)……まぁ、俺みたいな人間が優待されるなんてね。人生で初めてじゃないですかね、こういう扱い。

担当者B:旅の中で、特に楽しみにされていることなどございますか?

木村:(少し考えて)うーん……ああいう“全部含まれてる”って感じ、いいっすね。日々の買い物とか計算とか、そういうのから解放されるのは。誰も俺に文句言わないなら、それで充分です。

担当者A:日常を離れてリラックスできる機会になると良いですね。

木村:リラックスって、今さらできんすかね。俺、正直……色々あってさ。まあ、言っても仕方ないけど。やってもないことを疑われて、避けられて、最後には「あなたは悪い人です」って決めつけられる。そういうのばっかだったんで。

担当者B:(やや慎重に)そのお気持ちは……お辛かったかと存じます。今回の旅では、新たな気持ちでお過ごしいただければと思います。

木村:(小声で)新たにする気なんかないですよ。俺は俺ですから。変えたって意味ないって、もう分かってる。

担当者A:……船内ではスタッフが常にサポートにあたっておりますので、もしお困りのことがあれば、遠慮なくお声がけください。

木村:(ため息まじりに)誰にも頼らないんで。今までも、これからも。ま、海でも見て、時間つぶせりゃいいですわ。


※補足記録:
全体として防衛的な態度をとり続け、終始「期待されていない自分」「誤解されてきた自分」を強調。質問への回答は流暢であるが、自己を正当化する語りが多く、他者の視点を受け入れる姿勢は希薄。
また、肯定的な問いに対しても一貫して否定・懐疑を返す傾向が強く、心理的孤立と自己憐憫の深さが観察された。

「誰にも頼らない」「変える気はない」といった発言に見られるように、被害者意識と対人不信の固定化が進行しており、想定外のストレス要因への反応に注意を要する対象者と考えられる。














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