茂木賢治朗著
序章
科学の世界は、長らく再現性と客観性を重視してきた。その根本原理に基づき、分子生化学は細胞の構造や機能を解明し、生命の営みを分子レベルで紐解くことを目指している。しかしながら、私たちが細胞を理解すればするほど、古代から続く伝統的な治療体系との共通点が浮かび上がることがある。
私は、帝栄学館大学理学部分子生化学研究室にて、細胞内小器官(オルガネラ)の構造と機能を研究している。特に、細胞活性化に関する応用研究に注力し、その成果は国内外で高く評価されてきた。現代の生命科学において、「細胞の理解なしに健康は語れない」という信念のもと、多くの若手研究者とともに、生命の本質を追求している。
この研究の過程で、私は一見科学とは相容れないように思われるシャーマニズムに興味を持つようになった。シャーマニズムは、霊的な存在との交信を通じて、人間の精神や身体を癒す技法の総称である。世界各地のシャーマンたちは、薬草を駆使し、伝統的な治療法を体系化してきた。その中には、分子生化学の観点から見ても興味深い知見が多く含まれている。
例えば、古代インドネシアに伝わる薬草学「ウサダ(Usada)」は、単なる民間療法にとどまらず、植物の有効成分を適切に活用する高度な知識体系を形成している。バリ島の伝統医たちは、長年にわたり伝承されてきたウサダの技術を用い、薬草の調合を行ってきた。その中には、私たちが現在研究している細胞活性化を促す成分が含まれている可能性がある。
本書では、シャーマニズムと分子生化学の接点を探りながら、古代の知識と現代科学がいかに交わるのかを考察する。シャーマンたちが伝承してきた技法の中には、未解明の生理学的メカニズムを秘めたものがあり、それを分子レベルで解析することで、新たな治療法の糸口が見えてくるかもしれない。
生命の根幹に迫るこの旅が、読者にとって新たな視点を提供し、科学と伝統医療の融合という可能性を考える一助となることを願う。

