記録005

記憶用資料


1975年7月18日 – ムクティ・カヤとデウィ・カーラ・ムクタの教え

ミズシマは、湖のほとりに座りながら、ゆっくりと語り始めた。彼の言葉は落ち着いており、まるで長年この話を語り続けてきたかのようだった。

「ムクティ・カヤ――それは、解脱に至るための肉体を意味する。」

ムクティ・カヤの教えは、ランガ族の信仰から発展したものであり、「輪廻の最適化」を目的とする宗教体系だという。

彼らは、現世の行いが次の転生の質を左右すると信じており、輪廻のサイクルをより良いものにするためには、日々の浄化と奉納の儀式が不可欠とされている。

そして彼らが崇拝する神が、「デウィ・カーラ・ムクタ」である。

「彼女は、魂を選別し、低徳の魂を破壊し、より高徳な魂へと再分配する存在だ。」

ムクティ・カヤの信者たちは、輪廻の監視者であるカーラ・ムクタに選ばれるために、魂の浄化と肉体の奉納を行うのだという。


黒いノニという神聖な果実

私は、湖のほとりに群生する黒いノニについて尋ねた。

「これは、ランガ族にとって最も神聖な果実だ。」

ミズシマはそう言いながら、黒ノニの実を手に取り、その表面を撫でた。

黒ノニは、祭事の際に必ず服用されるものであり、肉体の浄化と霊的な覚醒を促すとされている。信者たちは、この果実を食すことで、魂の純化が進むと考えているのだという。

私は、その果実に強く興味を持ち、「私も食べてみたい」と申し出た。

しかし、ミズシマは首を横に振り、静かに告げた。

「信徒以外が口にすることは禁じられている。これは我々を通し、カーラ・ムクタへ捧げられるものだからな。」


浄化の儀式と肉体の奉納

ムクティ・カヤの信者たちは、日常的に浄化の儀式を行っているという。

彼らは、髪や爪、皮膚など、自らの肉体の一部を神に捧げる。これにより、自らの魂を清め、次の転生の質を高めるとされている。

しかし、それだけではなかった。

「さらに高位の儀式では、より重要な肉体を捧げる必要がある。」

そう言いながら、ミズシマは服をまくり、私の目の前にそれを晒した。

私は息を呑んだ。

――そこには、あるものがなかった。

彼は、アチャリヤ(指導者)になる際に、自らを奉納したのだという。

しかし、驚くべきことに、傷は綺麗に塞がっており、まるで一流外科医の縫合結果のようだった。

ミズシマは淡々と答えた。

「ランガ族に伝わる薬を使った。肉体の再生を助け、回復を促すのだ。」

信じられなかった。通常ならば肉体の主要部を切断した場合、大量出血による出血性ショックや衛生面での感染症の可能性も大きい。しかし、ミズシマの体を見る限り、傷の跡はあるものの、自然なほど綺麗に塞がっていた。


奉納された肉体と輪廻の湖

ミズシマは、奉納された肉体の行方についても語った。

捧げられた髪や爪、皮膚、そして重要な肉体の一部は、オーガスタの葉に包まれ、輪廻の湖へと沈められるのだという。

「カーラ・ムクタがそれを受け入れ、魂の浄化を行うのだ。」

奉納が多くなる季節には、黒ノニの収穫量も増えると言われている。


スケッチ画













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